ceremony

ふつうにかいてみる。


仕事が終わって、ふらふらになってドーンと奢ってあげる。嬉しそうに食べるのは、僕といるからだと思う。
……でもこの考えはあまりしっくりこない。僕らの間に魔法はない。初級恋愛魔法使いの僕でも、それくらいはわかる。これは奇蹟と呼ぶに値しない、微弱な現象の一つだ。薄く口を開けてフォアグラを食べると、アンキモみたい・アンキモみたいって、頭でグルグルした。


それは言わなかった。


くだらない気持ちでいっぱいになってタクシーで帰る。New OrderのCeremonyを聴いてタバコをすっていると、ドーンと前に投げ出された。追突された。
運転手同士が話し合ってる間に、警察が来て、救急車が来て、知らない間に病院へついてた。
メールが来てた。
”今日は楽しかったよ。今度XXXXXXXXXXXXXXXXX”
こいつ本物のバカなんじゃないかと思った。


病院の廊下でポーッとして、運転手さんと話してると、前を家族と思しき集団が駆けていった。”もう間に合わないかも…”って言葉が聞こえた。最近見てないけど、テレビってこんな感じだったっけ? 
運転手さんに、ご家族は?と聞いた。嫁がいるよー。お子さんは? 21だけど……まあ……


運転手さん二人と僕。今後のことを話し合う。追突した運転手さんはすぐに死にそうだった。保険のこととか全然知らなくて、こっちの運転手さんが教えてあげてた。髪は薄く、気が弱そうで真面目そうで、いますぐ消えても不思議じゃない感じ。


New OrderのCeremonyは、きっと「世界はもうとっくに終わってる」って歌ってるんだと思う。