ユービック

ユビキタス…それは家電と家電が結びつく夢のネットワーク…


オーブンがトーストを創る
冷蔵庫がパンを求め
若者はコンビニへひた走る(パンを、求めて!)


そんな夢靄の真ん中で僕は、また居場所を見失っていた。ネットワーク回廊の壁際にサインが明滅する。物理学用語でいうところの異動、だ。


新天地は地方都市。いったいさ、「新しい天地」なんて、よくも言えるもんだ。やたらな広さが誇らしげな空は、僕を可能性の渦に叩き込む。また居場所がわからない。物理学でいうところの不安、だ。


広ければいいってもんじゃない。窓の外、遠く、海が見えた。隣で人間がなにか言っていたが、ネットを介していないのでよくわからない。素敵な景色でしょ、だったか。海はきれいだった。自由に見えた。そういった錯覚が僕を規定するのだ。物理でいうところの、がんばりますよろしくおねがいします、だ。